道展物語(10)~地区別陳列の試み~

道展物語

2023.05.19

 第12回道展は、新しい試みとして地区別に陳列した。もちろん大まかな区別ではあるが、これによって地域による作品の傾向や質の違い、また風土の影響がどのくらいみられるかなど、確かめてみるつもりであった。次の『道展素描』と題した批評は、この点にも触れていて興味深い。

~北海道の美術もようやく峠を一つ越して、第12回道美術が一つの軌道に乗り出したと言ってもいいと思う。今年の道展は新人が賑やかに登場して多士斎々、函館の遠藤孝一君、小樽の江河宏君らに、新人中の新人として、何れも元気一杯な絵を描き、その健実な技法を余す処なく発揮し、中でも女流の華々しき進出が目についた。末武清江、佐々木真佐子の諸嬢がそれである。それらの中にあって、黙々苦節十年の歩みを続けている中堅作家の一群もまた見逃してはならないだろう。例えば野口英夫、斎藤七資諸氏など、文字通り苦節十年道画壇の様々な動きの中に、よく自己を守り続けてきた人達と言ってよかろう。一見何の奇もない平凡な画風の中に、並々ならぬ精進の跡が見えている。

 それぞれの地方の作品を、なるたけ近い所に集めた今年の道展の陳列は、出来あがったところを見ると、地方別と共に団体別みたいなものを感ずるが、我々の風土が各自の芸術に及ぼす影響という様なものを常に考え、また指導者がその一部の後輩に及ぼす影響の力強さも考えみられるのである。例えば、道南に地を占めて、常に明快な色調の誇りをみせている函館地方の、一つの型が注意を引く。そして、その技巧の優れた作家達の今までの函館風の型から、全く別な型を作りだしているのは面白い現象であろう。これと同じ傾向を、小樽、札幌、旭川、名寄等の地方作家にみるが、その中にあって岩内地方の作家が最も顕著なものと言ってよかろう。

 今年は大作が非常に多く、道在住の作家が、かかる大作を描きこなす腕前に至った事は欣快ではあるが、いたずらに大作をものにして画運の隆盛を物語るとは断じがたい。ともあれ今年の道展は、各作家が力一杯のものを並べていて観る者をして心の中に道美術の萬歳を叫ばせる。~(以下略・小樽新聞、昭和11年9月20日掲載)

 なお、この批評の筆者は匿名であった。(続く)~次回『第1回道展絵画講習会』

~道展四十年史より(一部中略あり)(K.W.)

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