道展物語(1)~道展の誕生前夜~

道展物語

2023.05.19

 大正十四年に北海道美術協会が結成され道展が生まれたことは、北海道の美術界にとってまさに画期的なできごとであった。これを可能にしたのは北海道の作家の生長と、作家同士の友諠的な接近、ことに札幌と小樽の作家の接近であったとも思われる。

 作家たちがお互いに歩みより、大きく団結しようとする希望と態勢は、大正末期の北海道の美術界の顕著な事実であった。道展の誕生は来るべきものがついに来たにほかならないが、その最初の口火は、竹内武夫、兼平英二(改英示)、加藤悦郎の三人によって切られた。その時の模様を兼平はこう言っている。

―漫画の加藤悦郎君が小樽から札幌に移住して北海タイムスへ入社した頃、私はよく札幌へ出ると加藤君の家を訪ねて二人で酒を飲んでは話合い、夜の更けるのも知らずに過ごし、最終電車に遅れたことも度々。タイムスで記者をしていた竹内君を知ったのもその頃で度々逢った。ある晩、三人で絵の話を始めた。誰からともなく、北海道の文化発展のため本道にも大きな美術団体が在っていもいいなアと出ると、それは是非必要、美術家には経済的な力が不足だから、その方面はわしが知名の士を訪ねて後援者となってもらい、必ず実現しましょう。とその翌日あたりから竹内氏は北海道美術協会設立引導に八方奔走したわけです。―

 そしてその年、即ち大正十四年の秋十月、札幌中島公園農業館にて第一回の展覧会を開くにいたったのである。(続く)

~道展四十年史より(一部中略あり)

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